20歳の頃クラブデビューに失敗した話

今日は、20歳の頃の思い出を話そうと思う。初体験の話だ。初体験といっても、いやらしい話ではない。一瞬でも期待した諸君、いやらしい話でなくて、済まん。同級生と二人で、クラブを探してさまよった頃の話だ。時が経っても忘れることのできない、かなしい体験について、これから語ろうと思う。

スポンサードリンク

きっかけは男同士のサシ飲み

中学の同級生の男と、池袋で久しぶりに飲んだ。いわゆる「男同士のサシ飲み」というやつだ。
SNSではちょくちょく連絡を取りあっていたものの、会うのは、数年ぶりのこと。
久しぶりの再会に、酒がすすんだ。

20歳になりたての自分たちは、実質的にはすでに童貞ではなかったが、お互い男子校出身のため女性慣れしておらず、女性に対する心持ちは童貞そのものだったつまり我々は、大学生非童貞の根拠のない万能感と、女性に対する無力感を同時に抱いていた、そんな思春期特有の複雑な状態を共有する仲間=同志だったので、当然飲みは盛り上がった。

一緒に飲んだ友人は、結構顔が整っており、ダボダボの服装でキャップは斜めに被っているいわゆる「B系男子」。どこからどうみてもイキった大学生だ。こりゃ相当な数の女と遊んできたんだろうなと思いきや、女扱いはからっきしダメなヘタレ男子だった。

一方の自分も、比較的女性から好かれることが多く遊びに誘われたり告白されることもあったが、20代特有の自尊心から積極性を持てない、少しでも合わないことがあると遠ざける等面倒臭い男心を凝縮したような性格だったので、女性と付き合う機会は少なかった。

例えば女性から「初体験を一緒にしよう」と誘われた時に内心ガッツポーズを取りながらも「いや、そういうのは好きな人としなければ駄目だ。精神的な向上心のないものは、莫迦だ。」などとのたまいながらその場の自分の言葉に酔いつつも、家に帰ったあとで機会を逃したことを全力で後悔する。そんなどうしようもないことをする男だった。

その割に初体験は好きでない女とした。人を傷つけ、自尊心を傷つけ、それでも高潔でありたいと願う心は捨てきれない、そのような思春期特有の歪んだ苦悩を繰り返していた。真なる童貞でないから、守り抜いた漢の誇りすら持てぬ。そんな「童貞のなりぞこない同士」が、飲みながら傷の舐め合いをしていた。

そんな二人の「ヘタレ恋愛話」はおおい盛り上がった。

例えば、彼女と付き合い1ヶ月経ち、自分の部屋にきたときにいよいよだと思いエッチしようとしたら、拒まれた上にフラれただとか・・・切なくなるような甘酸っぱいエピソードもいっぱい聞き、その度に自分は、、

大笑いした。

他人の恋愛にまつわる不幸話ほど笑えるものはない。盛り上がれば盛り上がるほど、テンションも上がり、若干酔っ払った勢いで、友人の肩をぽんぽん叩きながら、よし、今日は朝まで飲み明かそうや。ヤケ酒だ!おおいに飲め、酔え、がっははは!

ただ飲みたいだけだった。友人はというと結構本気でへこんでいた。しかしへこたれることなく同じようなことばかり繰り返しているどうしようもなく駄目な男だ。しばらく飲んでいると、酒がまわってきた友人が、
「どうせ朝まで飲むなら、男だけもちょっとな。クラブに行ってみるか。クラブで声をかけた女と飲もうよ。どう?」
などともちかけてきた。

「クラブ」を概念しか知らない二人

それまで、学校の卒業ライブやイベントでVUENOSなどのクラブに行ったことはあったが、「特に用もなく」クラブに行くというのは初めてのことだった。いや、用もなくというのは嘘だ。目的はナンパだ。それ以外にあるまい。兎にも角にも、「くらぶ」なるものに行くのは初めてのことだった。初体験。

この初体験が、心に深く傷を遺すことになることを知る由もなかったその時の俺は、

「よし、行こうじゃないか。」

二つ返事で了承した。

「ところで、クラブってどんなんだっけ?」

レゲエ系クラブなんちゃら

音楽が流れていて、男女が踊っていて、にぎやかな場所で、ナンパが横行する場所だというイメージだけが先行していたが、自分も友人も、実際にクラブがどこにあるかよくわかっていなかった。

二人して携帯で
「池袋 クラブ」
と検索してみるも、高級クラブだとか、女性の接客系の店しか出てこなかったので、検索方法を工夫したり試行錯誤してみると、ようやく

レゲエ系クラブなんちゃら

というのが出てきた。レゲエ。いいじゃないか、あんまり聴かないけど。ヤーマン。二人で目的地へと向かうことにした。ワクワクと緊張混ざり合い高鳴る鼓動を抑えつつ歩いていると、二人とも少しずつ無口になっていた。

降りしきる雨の中、ネットの地図を頼りに、クラブを探す。怪しい飲屋街。入り口にようやくたどり着いた、と思ったら、入り口付近に、ドレッド頭のいかついニーチャンが。

ちょ…。

出直すか。
ヘタレな自分たちは、出直すことにした。だって、怖いじゃん。
が、すでに友人の終電がなくなってしまった。

こうなったら、クラブに行かなきゃ気が治まらん!意地でも行ってやる。行くか、死ぬかだ。行け!
我々は少々ムキになっていた。

再度「池袋 クラブ 音楽」等様々なワードを駆使して検索し、とうとうそれらしいものを発見。目が血走っていたのもあり、すぐに目的地に向かった。

今度は入り口に誰もいないので、エレベーターで地下に入ってみると、
ん?
無音・・・誰もいない。真っ暗でがらんどうの空間が広がっていた。
今日は休館日か?

「残念だったな。」

「休みじゃしょうがねえよな」

そういいつつも、友人は内心少し、ほっとしていたはずだ。
無事帰れそうだ、と。

だが、酒も入り若干気が大きくなっているワガハイは、

「次のとこには絶対入ろう!検索するぞ!」

と、次に行く気マンマン。謎に行く気マンマンになっていた。ヨッパライ特有の「根拠のない自信モード」だ。

3度目の正直を信じ検索してみると、近くにクラブがあるという情報を手に入れた。

スポンサードリンク

事件はそのクラブで起こった

地下に行こうとすると、入り口からいきなりガタイのいい黒人二人組が出てきて、

「ジャパニーズウーマンベリープッシー」

といったようなことを言っていた。

怖…

しかしもはや後戻りはできない。もはや時刻は丑三つ時。シラフであればとっくに諦めているところ、自分たちは「無敵のひと」なのでズンズンと奥まで入っていく。酒の力は偉大である。
クラブは地下2階にあり、1階はソープだった。
むしろソープに行きたいような気分だったが、大学生につき金が足りないし、なによりそこまでの勇気はなかった。いや、勇気ってなに。

いよいよ目的のクラブに到着。その達成感たるや凄まじいものがあった。
それにしても狭い。狭いぞ。バーと同じくらいだ。だが、ちらほらだが女性もいる。これはチャンスじゃないか。目の前にはお立ち台のようなものがある。ここでポールダンスのようなものが行われるのか?
まあいい。その前に、酒を頼むか。
ということで、ジャックダニエルを頼んだ。
飲まなきゃ損だ。俺は飲むぞ。飲む、とことんな。女なんてどうでもいい。飲むんだ。俺たちは飲みにきたんだよな、なあ?

そんなことを言い合いながら戦士二人が一息ついていると、突如、目の前のステージに女装した男が、女装した男が現れた。

女装男子のささやき

歌う女装暗視を見てオタクっぽいメガネの男が手拍子する。横にいたギャルも手拍子。

ちょっと待て。これはなんだ。客層なんなんだ。

変態の宝石箱か?カオスの大盤振る舞いか?いや、まてまて、もしかしたら、クラブとは本来こういったところなのかもしれない。
もう少しまとう。12時から飲み放題らしいし、それまで待ってもいいだろう。

ちょっと分析してみよう、冷静な分析が必要だ。脳内でガリレオの音楽が流れ、状況整理に入った。DJは、メジャーなJポップをかけており、とりあえず、オタク系のイベントをやっている日ではないらしい。しかし、いる人の種類がつかめん。オタクもいれば、ギャルもいる。これがクラブというものなのか?はたまた、本日のイベントがカオスイベントなのか?

と、ステージ上の女装男子、

「歌える人は歌っていいからねー」

そんな、往年のミスチルの桜井さんのイノセントワールド的な展開。歌うわけがなかろう。

しかし、その予想は裏切られ、曲がかかるたびに、ステージに自由に上がり、歌いだす客。
おいおい・・・ここの観客のノリ、どうなってるんだい。これが江戸っ子かい?俺はぜってぇ無理だぜ・・・そんな勇気ないですよ。

チラチラこっち見ながら言うなよ。

「(アンタも歌いなよ・・・)」

そんな目で誘うの・・・やめてくれよ。

しばらくし、ドリンクフリータイムが開始された。
その場にいることにキョーフさえ感じた俺たちだったが、今更どこかの店で始発を待つも面倒なので、朝までそこに居座ることに。肉を喰らわば骨までよ。なあ、相棒?

相棒は憔悴しきっていた。が。

事態はさらに悪化

女装男子の格好をした悪魔の一言から、事態はさらに悪化の一途をたどることとなる。

「さぁー!恒例のイントロゲームやるよー!」

なにー!?恒例ってなんだ!?クラブの常識か?!オラそんなのしらねえだ、東京でべこ飼うだ!

「4チームにわかれて、知ってる曲流れたら歌うよー!」

まさか俺らも参加すんのか?

・・・そう、参加することになったのです。

ということで、よくわからないイントロゲームに参加する羽目になってしまった。
4チームに分けられる時に、端っこで座りながら飲んでいるわけにはいかなかった。ノリが悪い嫌なやつと思われたら悲しいし。従順な俺たちは、参加したくて仕方がない人みたいに振る舞った。飼いならされたブタさ。

まあいいさ。適当にやり過ごせば・・・。
と、そんなことを考えていると、プッチモニが流れ、俺は流れのままに、
ちょこっとLOVE
を歌った。歌ってしまった。公衆の面前で。マル、マル、マルマルマル!とか叫んでいた。なんならちょっと振り付けもしていた。ちょこっとLOVEを。知らない人たちの前で。歌った。乙女心全開で。

それからは悪夢だった。

全てを酒のせいにした。

真相

どうやら、サークルかなんかの打ち上げだったらしい。
もっと言うとそこはクラブではなくライブハウスだったようだ。
そこに見ず知らずの若者が二人参加。

KYだ。

結局なんのサークル(集まり?)なのかはわからなかったが、
初めてのクラブデビューは、知らないサークルの集まりにゲリラ参加をしちょこっとLOVEを歌うKYになるというとんでもない体験になった。
もう懲り懲り。

そんな風に思った、苦いクラブデューだった。というか、デビューすらしてなかった。

スポンサードリンク
最新情報をチェックするならこちら↓