皆さまご機嫌よう、ごいちです。
本日は一部でカルト的な人気を誇る「TRUMPシリーズ」の「リリウム」の続編とも言える朗読劇「黑世界」を動画配信で観覧したので、感想を伝えていきたいと思います。
きっかけはリリウムの観劇
自分がTRUMPシリーズを知ったきっかけは、モーニング娘。メンバーも出演するハロー!プロジェクトの演劇女子部ミュージカル「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」だ。
こちらは当時モーニング娘。14の絶対的センターを務めていた鞘師里保とスマイレージの和田彩花主演、そして圧倒的な存在感を放った工藤遥も出演していた作品。当時からハロプロ(主にまーちゃんこと佐藤優樹)を追っていた自分は、「よおし、まーちゃんが頑張る姿を応援しにいっちゃうぞっ♪」的なルンルン気分でこの作品を観にいった。
が、そんな軽い気持ちを打ち砕く絶望につぐ絶望の展開。少女たちを翻弄する無慈悲な運命。声が枯れるほどの慟哭。鳥肌のパフォーマンス。世界観と一体化した重厚感のある音楽。伏線が練り込まれた脚本。押し寄せる悲劇と感動の波に、多くのオタクが阿鼻叫喚し、同時に感涙し、思わず語らずにはいられない伝説のミュージカルとなった。神様仏様末満様ありがとう、ファルスあなたイケメンすぎるよ、ハロプロレベル高すぎかよ、糞事務所アップフロント様ありがとうと言わずにはいられなかった。
あまりの衝撃的な内容に、未だにオタクの語り草となっている。またこの舞台での活躍が工藤遥の以降の舞台での活躍やルパンレンジャーにも繋がったと思う。それぐらい影響力がある作品だった。
未見ならばまず観るべし
ハロプロファンはもちろん、「吸血鬼」「耽美」「ミュージカル」「クラン」「ディストピア」「閉鎖空間」「少女たち」「伏線」といったワードにゾクゾクくる方は是非一度観てほしい。音楽も素晴らしい。和田俊輔さんは神ですね。
ちなみにこの作品はTRUMPシリーズと呼ばれる永遠の命を持つ「吸血鬼の始祖」を題材とした一連のシリーズと世界観を共有している。その耽美でゴシックでホラーな世界観に見事ハマった自分は、他のTRUMPシリーズも観ることとなった。ちなみに他のシリーズはハロプロの女の園ではなくDボーイズなどの男前たちが出演している。美青年たちが演じる吸血鬼・・・それはそれで生唾ものだ。
ちなみにシリーズは上演順に新しい話になっているわけではなく、時系列がかなり複雑になっており、リリウムはTRUMPシリーズの中でも終末に近い話になっている。ということで、他のTRUMP作品を踏まえた上で再度観ると、登場人物の行動や発言の深みがまた違った味わいとなって響いてくる。そんな面白さがある。スターウォーズでいうところの、4・5・6を観た後に1・2・3を観るようなものか。
黑世界について
公式PV。
鞘師里保主演という衝撃
さて今回の黑世界はというと、なんとリリウムで主演を務めていたあの鞘師里保さんが。リリウムと同じ「リリー役」で出演するのだ。鞘師里保がモーニング娘。を辞める。脚本の末満さんが糞事務所と揉める。などから出演しての続編は絶望的と思われていたので、界隈ではちょっとした事件になった。熱狂的鞘師推し女優の松岡茉優さんは観るのかな?なんていらんことを思ったりした。(笑)
5年以上ぶりに続編ともいえる作品に出るというのは、なんとロマン溢れる出来事だろうか。コロナは恨めしいが、今回の出演と上演形式は、コロナがなければ実現しなかった話だと思う。(本来上演予定だった作品はLILIUMから300年も前の話なので、出演者も全然違うものになったはず)
出演陣が豪華でプレミアム
更に他の俳優陣も超豪華。今回自分が観た日和の章では、レミゼラブルなどにも出演する人気舞台俳優の上原理生さんや、ターンAガンダムのロラン・セアックはじめ有名作品に多数出演して活躍する人気声優の朴璐美さん、それから連続テレビ小説や数多くの雑誌でも活躍するMIOさんYAEさんなど、幅広いフィールドで活躍される実力派が揃っている。
色々な垣根を超えており、なんというか滅多に観ることのできないプレミアムな組み合わせだと思った。ちなみに自分が出ていた回ではアイクぬわらさんがコロナの影響で出られず、代役で三好大貴さんが参加されていた。この三好さんの鬼気迫る演技素晴らしかった。
複数作家で織りなすオムニバス形式
今回は末満健一さんだけでなく、岩井勇気さん、葛木英さん、来楽零さんと複数人で同じ世界観を共有した脚本をそれぞれ持ち寄るオムニバス形式になっている。
「時よ止まれ 君に 永久の美しさを・・・」
黑世界全体の脚本に共通する設定として、リリウムで望まぬ中で不死となってしまった主人公「リリー」が、永遠の繭期の中、あてもなき不死の旅をする中で様々な人々と出逢っていくといった物語になっている。不老のかなしさ、不死の苦しみ、そして一抹の希望。それぞれの話の中で様々な側面が描かれていた。
各話ごとの感想(ネタバレありにつき未見の方注意。)
音楽朗読劇『黑世界』日和の章
■各話タイトル
①家族ごっこ[作・末満健一]
②青い薔薇の教会[作・葛木英]
③静かな村の賑やかなふたり[作・岩井勇気]
④血と記憶[作・末満健一]
⑤二本の鎖[作・来楽零]
⑥百年の孤独[作・末満健一]— 末満健一 (@suemitsu) September 19, 2020
①家族ごっこ
MIO,YAEさんがそれぞれ紫蘭と竜担をやっており、リリーの背負う十字架の重さをあらわすような辛辣な言葉を吐いていくところから始まる。かなり役にハマっていた。リリーが不死の絶望の中、吸血種の子供二人のいる家族と暮らす中で次第に「愛情」といったものを取り戻していく話。それだけで終わればよいのだが・・・実にTRUMP (絶望)
②青い薔薇の教会の話
リリーが排他的な村の教会へ訪れる話。アイクぬわらの代役の三好大貴さんの鬼気迫る演技が素晴らしかった。後、モスカータという青年役の朴さんの声がハマりすぎていた。それだけで観る価値があるといえるほど。末満さんとまた違った味わいがあり、でもちゃんと面白かった。
罪と罰と、葛藤と。モスカータの気持ちも、神父の気持ちも痛いほどわかる。犯罪者に子供を殺された親の気持ちはこうなのかな、なんてことを考えたり。
③静かな村の賑やかな2人
リリーが思い込みが激しすぎる男女2人と遭遇して振り回されるドタバタ劇。岩井さん脚本なだけあって岩井節前回で、①②とのギャップが凄まじく思い切り笑えた。ソーシャル・ディスタンスキッス。あと上原さんの美声の無駄すぎる無駄遣い。残念美男美女。最高。
意外と「世間一般の吸血鬼のイメージ」と「この世界における吸血種」の違いの設定がわかりやすく伝わるという点も見所だったりする。それにしても岩井さん天才だなあ。また観たいと思わされてしまった(笑)
なんか全然違うんだけど独特のリズム感というかテンポから、醤油の魔人と塩の魔人を思い出してしまった。
④血と記憶
大人になったノック(上原理生さん)とラッカ(朴璐美さん)、軍服が似合いすぎる。声も凛として最高の二人。かつての家族を追う切なさ。追われる切なさ。しかしヴァンパイアハンターは頭イカれてるやつが多いのか?イカれた男の暴走のせいでノックが・・・。ここでリリーが血液から再生するシーンがあるのだが、演じる鞘師さんが体が脈打ち再生していくグロテスクで神秘的な姿を見事にコンテンポラリーな形で表現されていた。液体から再生していく姿という難しい表現をCGなくして伝える力、凄し。
⑤二本の鎖
身分の差を超え駆け落ちをした二人が、実はそれぞれイニシアチブをとり合って繋がっていたという、歪んだ愛の話。個人的には二人の愛の形にドン引きするチェリー(エツ子先生)が面白かった。作品を通して全体的にこのチェリーのキャラがいい味出していたな。
⑥百年の孤独
①→④→⑥と、この作品は「ラッカとリリー」の二人の話といっても過言ではない。それにしても少女から男性、女性、老女まで演じ分ける朴璐美さん流石すぎる。
ここまで観て、作品を通じて「黑世界」の名の通り、リリーが抱く世界に対する果てなき絶望は確かだが、リリーのみせたラッカへの「母の愛」、そしてラッカがみせたリリーへの「母への愛」は、永遠の夜に包まれる黑世界を照らす「日和」になったのではないか。リリーなら、過去(ウル)に縛られ、絶望の中彷徨い箱庭をつくって気休めをするソフィとは違う形で「不死の孤独」を乗り越えていける気がする。今後どう展開していくのかは、非常に気になるところだ。
朗読劇という形式について
コロナ禍ということもあり役者同士のソーシャル・ディスタンスが保たれた状態のかなり特殊な形態で上演された。朗読劇というので文学サークルでよくやるような「衣装着て座って本読むだけ」の形式かなと勝手に思い込んでいたが、実際にみると本を読みながら行われるものの「歌」や「踊り」もあり殆ど完全に近いミュージカルだった・・・本を読みながら行われるということを除いて。
今回はその朗読劇であることから上原さんと朴さんが様々な役を演じ分けており、朗読劇ならではの表現というものを感じた。個人的には子供時代を除き違和感どこいったという状態で、すごくアリだった。
「今しか観ることができない」とは劇だけでなくや映画など作品と呼ばれるもの全てに当てはまる言葉だと思うが、こちらの作品は特に「時機性」が強くあらわれていたので、観ることができてよかった。TRUMPの年表を観る限りだと今後まだまだ作品は続くので、今後も非常に楽しみだ。
DVD・Bru-ray発売決定!
2021/2/17、ポニーキャニオンより。ファン待望のDVDが発売されました!
自分はまだ観ていない雨下の章を鑑賞します。
黒世界の物語に再び触れることができる・・・・TRUMPシリーズこれからも見逃せませんね。