皆さまご機嫌よう。ごいちです。
IMAXレーザーで映画「TENET(テネット)」観てきました。クリストファー・ノーラン監督の作品はダークナイト、インセプション、メメントと、考察意欲を掻き立てる作品が多いので、映画を観る前から
と意気込んでおりました。絶対にレビューが興味深い内容になるはずだと。
しかし・・・・その甘ったるい考えは見事打ち砕かれることとなりました。
観る前↓
観ている最中↓
い、いや待て・・・これってどういうことだっけ?あれ?いつの話?これはいつの誰?あれ?お・・・おい。置いてけぼりにするな!待て・・・おれは人間をやめるぞ、ジョジョーーーーーーーッッ!!
そして。
観終わったあと↓
こうなりました。映画っていいね。
複雑な考察をすると脳みそが溶けそうになるので、偏差値10で表現してみます↓
- ニール、イケメン
- ブルックスブラザーズ、かわいそう
- キャット、スタイルよすぎ
- カーチェイス、どうやって撮ったの
こんな感じでしたね。
考察とか到底無理。エントロピーってなんだっけ状態だし、テネットってなんだっけだし、もう色々とプロの映画評論家に任せますね。(職務放棄)
評論家ってすごいね。
IMAXレーザーってどう違うの?
冒頭のオペラ会場での爆発やBGMの低音の迫力が凄かった。文字通り音の振動で身体が揺さぶられる。
カーチェイスのシーンも車酔いするぐらいの臨場感。映画館でしかできない体験という意味では、多めにチケット代を払う価値は十分にあると感じた。」観る」というよりは作品に没入して「体験する」感覚に近づくことができる。
さらに、今の時期はコロナでどこの劇場もソーシャルディスタンスが保たれる状態になっているため、広々とした劇場で快適に観ることができた。IMAXである必然性は感じないが、お金に余裕のない方以外にはおすすめしたい。
未見は、前情報なしで観ることをオススメしたい
まずは予告を見よ!
・・・未見の人には意味がわからない予告。
未見の時は、伏線を多数織り交ぜて進む複雑なストーリーといったところかと予測していたが、実際観てみると、伏線よりも「時系列」と「設定」がかなり複雑で混乱を招くつくりになっている映画だった。どんなストーリーだったの?と聞かれても、手短に説明すると非常に淡白になる一方、正確に伝える場合冗長になる。
この作品はぜひ前情報なしで観てほしい。混乱する感覚を味わうことができるのは、初見の特権なので、その感覚を楽しんでほしいと思う。
初見時の圧倒的な没入感が魅力
この映画の凄いところは、完全にはよく理解できていない観客に「何か凄い映画を観ている気がする」と思わせてしまうリアリティとスケール感だ。時間逆行という一見荒唐無稽な設定を、凄まじい説得力で描いている。
金曜ロードショーなどを観ていると登場人物が出る度に「アメリカ空軍大佐:ダグラス・マッカーサー」など登場人物の名称字幕が出ることがあるが、こちらの映画では「TENET」の説明を除き、説明的要素が少ない。急に場面展開するので、置いてけぼりを食らうこと請け合いだ。そのため映画の観客は、主人公の混乱した心情を追体験することになる。
「エントロピー?聞いたことあるけどなんだっけ。お前は敵?味方?あれ、なんのために戦ってるんだっけ?お、この人すごい美人だな。おい、ここどこだ!」
この主人公との混乱の共有が緊張感に繋がっている。気を抜くと一気に置いていかれる感覚がある。
広告社会である現代は「わかりやすいもの」で溢れているが、「わかりにくいもの」の面白さを改めて示してくれた映画だった。
2回目の視聴をする前に知っておきたい情報
ある程度解説が出回っているので、当サイトでは筆者のような偏差値5の方向けに「知っておくと2回目の視聴が楽しめる」情報を伝えていこうと思う。
※ネタバレ注意※
TENET( テネット)って結局なんのこと?
日本人にとっては耳慣れないがれっきとした英単語だ。意味は
(個人または集団が信奉する)主義、教義 引用元:weblio英単語
となっている。また、TENETは回文になっており、逆さから読んでもTENETだ。また、ラテン語でのSATOR式と呼ばれる回文に以下のようなものがあるようだ↓
SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS
意味は、「農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事をする」というもので文章としては直接作品に関係ないが、以下のように四角形に並べると、縦にも読めるようになっており、さらに、「TENET」の文字が十字に並ぶ。
S | A | T | O | R |
A | R | E | P | O |
T | E | N | E | T |
O | P | E | R | A |
R | O | T | A | S |
遺跡に刻まれていたという話もあることから「最古の回文」とも呼ばれているそうだが、十字に「教義」が浮かび上がるというのは、何か神秘的なものを感じる。
さらに、
- SATOR=セイター
- AREPO=画家のトマス・アレポ
- OPERA=キエフのオペラハウス
- ROTAS=ロータス社(金庫管理会社)
と、作品に出てくる登場人物や用語に見事にこの回文の単語が使われている。この作品自体がこの回文を意識しているのは間違いなさそうだ。そして中でもこの回文の中心となるTENETは
SATOR AREPO →TENET← OPERA ROTAS
左右から挟み込んで読んだ時の中間に位置する。これは本作品における過去と未来による挟み撃ちの作戦を連想させる。
本作品におけるTENET
未来の主人公が「地球の滅亡」を防ぐために結成した組織が TENET。
また、クライマックスの10分(TEN)間の迎撃作戦の名称が「TENET」であり、TEN→←NETの文字が過去と未来から挟み込む作戦をうまくあらわしている。この作品自体がこのクライマックスの作戦ありきで構築されていたのではないかとも考えられる。
タイムスリップもの?
馴染み深いドラえもんをはじめ「タイムスリップ」がテーマになっている作品が多数存在しており、我々が馴染みすぎているため、逆行をタイムスリップのように
「過去のある地点に戻る」
ものと捉えてしまいがちだ。しかしこの作品における逆行の仕掛けは、あくまでも「逆行」なので、1週間過去に戻るには、逆行した世界の中で1週間分過ごす必要がある。後述するが、この仕組みと「過去改変」が可能か否かの部分が非常に見えにくく、多くの視聴者を混乱させる要因となっている。
逆行によって過去の事実を改変することはできるのか?
作品を理解する上で非常に重要な点だ。
回転ドアを通ったものは人間以外も逆行するため、銃も銃口に戻っていく。銃のシーンだけみると「時間の逆行を部分的に操作することができる」ようにも捉えられるため、混乱を招く描写だ。
また、この仕組みを実現するにはあらかじめ過去に撃っていなければいけないのでは?仮に主人公が逆行銃を手にして別の部屋に移動して撃った場合どうなるのか?銃弾はどのようにして戻るのか?こうした疑問を持った方も多いだろうと思う。
過去改変に関しては作品により設定や解釈が異なる
日本人に馴染みの深いドラえもんやバックトゥーザ・フューチャーなどタイムスリップを取り扱う作品は数多くあるが、
- 過去を改変することで未来が変わる(ドラえもん、バックトゥーザ・フューチャー)
- 過去を改変するとパラレルワールドが発生する(ドラゴンボールZのセル編)
- 過去を改変しても結果的に何らかのしわ寄せが来る(バタフライエフェクト、トドメのキス)
上記3つのように作品によって設定が異なる。
この作品における逆行の設定の非常にややこしいところなのだが、同じ人物が同じ時間軸に存在することもあり得る(接触すると対消滅するが)ため、順行に対する完全な逆行とはいい難い。同じ時間軸においても、順行と同じ道を辿らずとも過去のある地点に戻れてしまうのだ。
しかし、順行世界の事実の中に逆行の時の行動が含まれてしまうため、テネットにおいては、「銃痕がある場合銃は必ず撃たれる」→「逆行したとしても過去の事実は変えられない」ようだ。これが作中における「起こってしまったことは仕方がない」の台詞の意味するところだろう。ある地点で死ぬ人間は、死んだ事実を知った未来の人間が逆行して救おうとしても不可能ということになる。この作品においては、自由意志のように見えるものも含めて全ての事実が変えることのできない一本の直線になっているようだ。
もし逆行により過去の事実を変えることができないのならば、「そもそも過去に逆行する意味がない」ということにはならないか。つまり、そもそも「TENET」の作戦や未来人の行動すべてが無意味にならないか?と思えてくるが、逆行も含めて既に事実に組み込まれているため、そもそも「逆行しない」という選択はテネットの世界においてはあり得なかった、ということだろう。
この部分の設定が、作品を観た人にとって一番理解が難しい点だったと思う。
未来は変えることができる?
「未来から過去に戻り過去の事実を変える」ことはできないが、未来は「組み込まれた事実=運命」がわからないため、逆行することにより
逆行時点より未来に起こりうる事実は変えることができる
可能性はある。となると、未来に人類が滅亡する可能性があるのならば、それを防ぐために未来人が逆行を利用しようとするのは理解ができる行動だ。
ニールの正体は?
- 主人公の好きな飲み物を把握している
- ニール役のロバート・パティンソンがニール役をやるにあたって金髪(マックスと同じ髪色)に染めている
- ニールがキャットと同じくイギリス訛りの英語を喋る
- セイターの息子のMAXは略称。正式名称がMaximilienだとすると、逆から読むとNeilimixamとなりニールの文字が浮かび上がる
上記の理由から考察サイト等ではニール=マックス(キャットとセイターの息子)説が出ている。好きな飲み物に関しては、未来で主人公から雇われたため把握していてもおかしくはない(黒幕が主人公であることの伏線としてのシーン)が、二人の妙に息の合う関係性は「長い期間を経て育まれたもの」と捉えると、このシーンに味わいが増してくる。
物語の中で名言されていないためハッキリとしたことは言えないが、映画を観直す時にニール=マックスではないか?と思いつつそれぞれのシーンを観ていくと、趣が大きく変わることは間違いない。作品を楽しむために知っておくと良い情報だ。
もしニールがマックスだとすると、「主人公によって命を救われた」ニールが、「主人公の命を救う」という、違いが違いを救う螺旋構造になるため、こちらも回文的な構造が出来上がり美しい。
赤色と青色に注目
作品では
赤色=順行 青色=逆行
と色分けされて使われており、それぞれ作戦の際の腕章やキャットのドレスの色、回転ドアの部屋の色など視聴者が見分ける際のヒントとなっている。使われている「色」に注目すると作品を観る際に理解しやすくなるためおすすめだ。これは監督による理解を助けるための「ヒント」みたいなものじゃないかと思う。
まとめ
以上、ごいちによる作品紹介でした。
量子力学についても紹介に組み入れようかと思いましたが、エントロピーの減少やシュレディンガーの猫、二重スリット実験など足を踏み入れると非常に深い沼に入り込み脳みそが溶けるため断念しました。
この作品の考察に関しては優れたレビューがいくつかありましたが、このサイトまでたどり着いている方は既にそれらを読んでいることと思います。こちらはやや噛み砕いて書いたので、2度目、3度目の視聴を検討している方の楽しむためのヒントにでもなれば幸いです。
2000文字くらいの感想でサクッとまとめようと思って書き始めた記事ですが、なんだかんだで長くなってしまいました。ちなみに本記事のアイキャッチ画像につかったフォントはSinhala MNというものです。実際に使われているフォント結構似ているので、「TENET」のロゴを再現したい方にオススメですよ。
拙いですが今後も映画のレビューをちょこちょこやっていこうと思います。